抄録
はじめに
障がいのある子どもが身近な地域でサービスが受けられる支援体制の整備がすすめられているが、在宅ケアを必要とする子どもの日々のケアのほとんどは家族が担っている現状にある。本研究では、岩手県内の在宅ケアが必要な子どもの家族の子育てへの思いと、子どもや家族の状況との関連を明らかにすることを目的とし、今後の具体的支援を検討する。
方法
2019年7月から2020年8月に、県内の在宅ケアが必要な0歳から18歳までの子どもを養育している家族に、子育てへの気持ち、子どもの状態や家族の状況について同意を得た上で無記名による自記式質問紙調査を行った。子育てへの気持ちに関する尺度の因子分析、各因子と子どもの状態や家族の状況との関連を分析した。
結果
同意が得られた家族は359名、回収は280部(回収率78.0%)であり、有効回答は262部(93.6%)た。子どもを養育している家族の気持ちには、第1因子「子どもとの相互作用の実感」、第2因子「日々の生活や社会への順応」、第3因子「ケア技術への自信」、第4因子「情緒の把握」、第5因子「愛着」が抽出された。他の因子と比べ、第3因子の得点が高く、第2因子の得点が低かった。子育てへの気持ちと有意な関連が認められたのは、子どもの年齢・体調、経済的・将来への不安、家族の体調・サポートであった。子どもの年齢が低いほど、第1因子や第3因子、第4因子、第5因子の得点が高かった。また、子どもの体調の不安定さや経済的・将来への不安があるほど、第1因子と第2因子の得点が低かった。第1因子や第2因子、第4因子については、家族の体調が不安定なほど得点が低く、家族へのサポートがあるほど得点が高かった。
考察
在宅ケアの必要な子どもを養育している家族が子どもとの相互作用を実感し、日々の生活の充実や社会とのつながりがもつためには、子どもの体調管理や今後の見通しへの支援、家族の体調にも目を向けたサポートの充実が求められる。