日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-12-08 医療的ケア児の在宅生活における父親の育児
−実態調査から見えた家族支援−
平本 栄己小川 一枝高橋 由紀子日高 美那穂
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2021 年 46 巻 2 号 p. 272

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抄録
はじめに 在宅生活する医療的ケア児は増加している。男性の育児に対する意識や関心が高まりつつあるが医療的ケア児におけるその実態は不明である。 目的 医療的ケア児の父親の育児の実態や両親の思いを知ることで父親への支援を考える。 方法 医療的ケア児のいる75世帯を対象に、育児内容、育児負担感や希望、パートナーに対する満足度等について調査(期間:平成31年2月1日 3月30日。)所属機関の倫理委員会の承認を得た。 結果 回収率:父親57.3%、母親64.0%。両親の年代は30〜40代が中心で児の年齢は2歳以下が全体の約75%。医療的ケアは経管栄養が最も多く、吸引、酸素吸入、気管切開、人工呼吸器など。91.7%の家庭が核家族。育児の主体は母親97.7%、父親の95.3%がフルタイム勤務で内92.7%が育児参加し、半数以上が育児負担感を感じていた。47.9%の母親が父親にもっと育児に関わって欲しいと望んでいた。パートナーへの声掛けは父親69.9%、母親64.6%が行っているが、母親の方がパートナーからの声掛けを少ないと感じていた。パートナーに対して満足と答えた割合は父親86.0%、母親70.9%、不満と答えた割合は父親0%、母親は16.7%。生活に対して満足は父親53.5%、母親23.0%、不満は父親23.3%、母親16.7%、普通が父親23.3%、母親が60.4%だった。 考察 父親からも半数以上の回答があり育児への関心の高さが窺がえたが負担感も感じていた。母親は父親に対して同等の育児の担い手として期待しているが、母親の期待と父親が行っているケアに相違があり父親に対する不満感に繋がっていると推察される。また、生活の満足度は母親の多くが普通と回答、不満の回答は父親に多かった。この結果は、母親は直接支援者からサービスを受け相談することで生活に折り合いをつけていることが一因と考える。今後、支援者は父親とのコミュニケーションを取る機会を大切にするなど父親を意識した支援を行うことが重要と考える。
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