日本重症心身障害学会誌
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O-12-07 重症心身障がい児を在宅で養育している両親の体験
熊谷 志美子松下 年子
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2021 年 46 巻 2 号 p. 272

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抄録
在宅で重症心身障がい児(以下、重症児)を養育している両親の語りから、学童期の重症児を育ててきた父母の思いを明らかにすることを目的とする。重症児を在宅で養育している両親5組に半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。結果、父親の語りからは【父親としての覚悟】【先が見通せないことによる不安】【在宅養育を継続する際の弊害】【在宅養育を継続するための支援】【重症児の成長を実感する喜びと養育の負担感】【社会生活を送りながら父親役割をとるための調整】【母親との関係性の中で感じていること】の7カテゴリーと23サブカテゴリーが抽出された。父親は母親と重症児を守る覚悟をもって父親役割を遂行し、母親と共に重症児の成長を喜びながら養育することで人間的成長を遂げる一方、相談相手が少なく孤立する傾向にあった。母親の語りからは【重症児であることの苦悩】【養育するうえでの不安や様々な負担】【社会資源や周囲の人々からの支援】【重症児の成長発達ときょうだいの存在による喜び】【現実と向き合い気持ちを切り替える】【在宅養育を円滑に行うための役割調整】【養育を継続していく中での父親への依存】の7カテゴリーと24サブカテゴリーが抽出された。母親は悲哀を抱えながらも父親や重症児に感謝しながら養育しており、父親と共に人間的成長を遂げる一方、養育に関する認識や思いに父親と相違があった。このように在宅で学童期の重症児を養育している両親は、様々な苦悩や葛藤を抱えながら困難な状況を乗り越え、喜びを見出し夫婦としてまた親として成長していた。しかし、重症児を在宅で養育する中での父親の孤立傾向、母親の養育に関する認識や思いに父親と相違があることなども明らかになった。よって、父親の心情を理解し言動を支持する関わりや感情表出できる場の提供をしたり、両親が養育に関する共通の認識をもち協働していけるように支援する必要があると考える。
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