日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-16-04 特有の胸郭の呼吸運動を阻害しない側臥位のための枕の試作
−重症心身障害児一例を通して−
吉井 牧子
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2021 年 46 巻 2 号 p. 287

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抄録

はじめに 重症心身障害児において、脊椎を含む胸郭変形がおこる例が多い。今回、深い側臥位姿勢保持と、肩の挙上と円背を強める努力呼吸を継続してきた結果悪化したと思われる胸郭変形を呈した一例を経験した。症例特有の呼吸運動、特に呼気時に胸郭自身の弾性による復元を阻害しないことに留意した枕を作成し、側臥位姿勢保持に使用した結果、呼吸と胸郭の状態に変化がみられたため、報告する。 症例紹介 10歳男児。診断名はPEHO症候群 新生児脳症後遺症 先天性心疾患(VSD)。身体機能はGMFCS∨レベル。円背・側弯著明。喉頭気管分離術後で人工呼吸器管理(SIMVモード 自発呼吸あり)。十分な排痰後も呼吸が乱れ、吸気では呼吸補助筋の収縮が強く、肩の挙上円背を強め、呼気では胸が開いて肋骨が下がるように力が緩みにくく、呼吸リズムの乱れが目立つ。その結果胸郭の前後径が増加傾向となり、一回換気量、SpO2が低下していく傾向がある。 方法 上部胸郭までの枕を作成し、強い円背の上部胸郭を体圧分散マットで支えることで肋骨の後側上下方の動きを阻害せずに安定した仰臥位保持が可能となり、枕ごと傾けることで胸を張った浅い側臥位保持が可能となった。枕の使用の有無での呼吸状態を比較するため、胸郭の動きと呼吸器グラフィックモニターの動画撮影、胸の高さ、側弯膨隆部の圧、呼吸数、SpO2、EtCO2、一回換気量、心拍数を測定した。 結果 枕無しでの側臥位に比べて、枕を使用した浅い側臥位では、呼吸器グラフィック流量の呼気の乱れ、胸の高さ、呼吸数の減少がみられた。 まとめ 枕は、特に呼気時の胸郭自身の弾性による復元を阻害しにくい側臥位のための姿勢保持具として有効であった。呼吸、胸郭の動きの特徴をとらえてその動きを阻害しない姿勢保持の工夫をすることで、呼吸機能の改善、胸郭変形拘縮悪化改善、予防が期待できる。

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