日本重症心身障害学会誌
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O-16-03 腹臥位姿勢の導入により呼吸状態の改善が得られた重症心身障害児の1例
佐藤 理枝子豊野 美幸坂本 知子
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2021 年 46 巻 2 号 p. 287

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抄録

はじめに 重症心身障害児(以下、重症児)における呼吸機能障害は予後を大きく左右する。非侵襲的人工呼吸器管理(NPPV)が必要な重症児の中に、変形・拘縮により呼吸障害の改善を目的に腹臥位を行うことが困難な場合がある。当センター入所中の重症児に対し多職種連携のもとで腹臥位を導入し、呼吸状態の改善がみられた症例を検討し報告する。 症例 9歳9か月女児。脳性麻痺、GMFCSレベルV、チアノーゼ性心疾患、てんかん、慢性心不全、慢性呼吸不全を合併。経腸栄養施行。低酸素血症と換気不全の進行あり、6歳からNPPVを導入した。口鼻マスクによるNPPV管理を常時施行しており、FiO2 33%で平均SpO2 83〜85%、痰が貯留するとSpO2 74〜80%に下降する。唾液の誤嚥性肺炎や無気肺を繰り返していた。呼吸理学療法を行っていたが、自力排痰が困難であった。8歳6か月時、右上葉肺炎と左無気肺がみられ、腹臥位姿勢とコンフォートカフのパーカッサーモードによる排痰を開始した。この腹臥位の導入にあたり、易骨折性、四肢の拘縮や脊柱側弯による良肢位設定の困難さ、循環動態への負荷、褥瘡のリスクが考えられたため、小児科医、整形外科医、看護師、PTが連携し、毎日2回、20分程度実施した。身近なぬいぐるみ等を使用、マスクのフィッティングに注意しモニタリングを行いながら腹臥位の設定手順を確立した。現在は看護師のみで毎日実施、医師・PTが定期評価を行い継続している。 結果と考察 腹臥位では、背部の挙上と肺胞呼吸音が聴取され、排痰後の安静時SpO2が85〜87%へ上昇した。腹臥位導入3か月後の胸部CTでは、右肺野の浸潤陰影の消失と左肺背部の無気肺が縮小した。重症児に対する腹臥位の効果は、背側胸郭・脊柱の可動性改善や換気量・換気血流比増加による酸素化の改善、肺内分泌物の移動による排痰の促進、呼吸の安定による過緊張状態の改善などがあげられる。定期評価を行いながら、腹臥位を継続することが重要である。

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