抄録
目的
重症心身障害児(者)の筋緊張亢進やこれに伴うROM制限等に関しては疼痛軽減、関節拘縮、骨折、ADL低下予防等の観点から理学療法場面においてもその重要性が指摘されている。当施設においてもポジショニングや徒手的アプローチ等を用いた利用者の筋緊張亢進緩和、これに不随する様々な問題に対応を行っているが即時的かつ継続的に効果を出す事は容易ではない。今回、筋緊張亢進による不快感を訴えられる利用者、ADL低下が予測される入所利用者に対し、昨年より導入された体外式衝撃波(拡散型ショックウェーブ治療(以下、RSW))を用いた筋緊張亢進緩和に対する理学療法を実施、検証を行った。
方法
筋緊張亢進による不快感を訴えられている、また、強い筋緊張亢進により今後ADL低下が予測される20代から50代の女性利用者3名の上腕二頭筋に対し、昨年2月より当施設に導入されたRSWを用いた筋緊張緩和に対する治療を3か月実施。MTSやMAS、ROM-T、担当者へのアンケートを用いた評価を実施し、その効果を検証した。
結果・考察
MTS、MAS、ROM-Tにおいて即時的、継続的共に一定の効果が得られた。また、担当者に対するアンケート調査においても介助動作時の筋緊張変化による更衣等ADL介助時や、医療処置時等の他動運動が行いやすくなったとの意見がきかれた。しかし、対象者における筋緊張亢進緩和や可動域の改善には個人差が大きかった。この理由としてRSWの生理学的作用機序として、筋に対して施術する事で効果を期待するものである事から、対象者の年齢や筋腹の太さ、筋緊張亢進状態の経年数等によっても効果に差が大きく現れた事が考えられた。今回の研究結果を踏まえた上で、今後さらに発展的な評価や使用条件等を模索する事で、重症心身障害児(者)の筋緊張亢進緩和においてもRSWが有効的な治療法となる事が示唆された。