日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-17-04 左手指拘縮のある利用者への拘縮改善
−手浴・他動運動での拘縮改善に向けての一考察−
菊地 笑美香
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2021 年 46 巻 2 号 p. 292

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抄録
はじめに A氏は痙性四肢麻痺があり、左手指の拘縮が進み、指が開排しにくい状態にある。また学童期のため急激な身長や体重の増加が見られる時期であり、骨に対して筋肉の成長が追い付かず関節が固くなりやすい。そこでA氏に対して手浴(温熱療法)・手掌マッサージ・他動運動(以下、ROM訓練)を組み合わせた介入を行い拘縮改善が得られたので報告する。 方法 1.対象:A氏 10代 急性脳症後遺症  2.対象手指関節:屈曲・伸展に制限のある左手2指PIP、3指PIP、4指PIP、DIP、5指PIP 3.事前調査:介入前12日間 対象手指の関節可動域(以下ROM)を測定。 4.ROM訓練:手浴・マッサージ後に、理学療法士と共に検討したROM訓練を週に2〜3回 5.評価:事前調査と介入前・後のROM測定値を比較。A氏とその家族に説明し、同意を得た。また、所属施設の倫理委員会の承認を得た。 結果 1.事前調査・実施前の部位毎のROM平均値比較において、全ての部位で最小値+1度、最大値+5度の拡大が見られた。 2.事前調査・実施前の全ての部位のROM最大値と最小値比較において、最小値±0〜+10度、最大値+5〜+20度の拡大が見られた。 3.実施前・後の全ての部位のROM平均値比較において、最小値+1度、最大値+12度の拡大が見られた。 4.実施前・後において+10度以上のROM拡大が見られた部位と回数は、全ての部位に見られ最低1回、最高12回であった。 考察 今回の介入において、全ての部位でROM拡大という結果が得られた。これは手浴・マッサージ後にROM訓練を行ったことによる効果と考える。手浴の温熱による疼痛閾値の上昇による痛みの減少、循環促進、軟部組織の剛性変化、リラクゼーション効果により緊張緩和が得られ、次にマッサージを実施することで効果が相乗的に促進された。そしてROMの拡大が段階的に図られ、拘縮が改善されたと考える。申告すべきCOIはない。
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