抄録
目的
超重症児(者)における抗不安薬・睡眠薬・筋弛緩薬の使用実態を調査する。
方法
超重症児スコア10点以上の神経筋疾患を除く医療的ケア児(者)に対し、2021年9月に当院で発行した外来・入院処方箋から、上記薬剤を抽出して集計した。薬効分類は「今日の治療薬2020年版(南江堂刊)」によった。
結果
対象は142(男75)人、年齢0〜73(中央値23)歳、超重症児スコアは10〜49点(超重症85/準超重症57)、生活環境は施設入所47/長期入院4/在宅87人、基礎疾患は中枢神経疾患130人/先天異常12人であった。超重症児スコアの下位項目はレスピレーター管理100人、気管切開66人、経管栄養131人、手術・服薬にても改善しない過緊張24人、体位交換6回/日以上139人であった。髄腔内バクロフェン療法を7人で施行されていた。抗不安薬は43人(すべてベンゾジアゼピン系)、睡眠薬は61人(バルビツール系2人、ベンゾジアゼピン系睡眠薬23人、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬1人、メラトニン受容体作動薬16人、オレキシン受容体拮抗薬3人、トリクロフォス37人、抱水クロラール2人)、筋弛緩薬は52人(ダントロレン42人、バクロフェン20人、チザニジン6人、エペリゾン4人)に投与されていた。単剤投与は抗不安薬5人、睡眠薬22人、筋弛緩薬9人、多剤併用は抗不安薬+睡眠薬10人、抗不安薬+筋弛緩薬14人、睡眠薬+筋弛緩薬9人、抗不安薬+睡眠薬+筋弛緩薬20人であった。頓用ジアゼパム座薬が12人で併用されていた。抗てんかん薬は77人で併用され、うちフェノバルビタールが49人、ガバペンチンは6人であった。髄腔内バクロフェン療法導入後に7人中4人で筋弛緩薬を1剤以上中止できたが、抗不安薬や睡眠薬は4人で増量されていた。
考察
超重症児(者)における筋緊張亢進・疼痛・不眠等に対する薬物治療は確立しておらず、多剤併用が常態化している現状が明らかとなった。個々の病態や症状に合わせた適正使用の検討が望まれる。