抄録
背景
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))はてんかん・筋緊張異常など複合的症状に睡眠障害の合併が多く、介護者の心身の負担になる。睡眠障害に対して優先される非薬物療法は重症児(者)には限界があり、統一された指針や推奨される薬剤は少ない。今回、当施設での長期入所者の睡眠状況と睡眠導入剤の使用状況を検討した。
方法
2022年4月現在の長期入所者を対象とし、年齢、性別、基礎疾患、睡眠導入剤の種類、睡眠時間、中途覚醒の日数、不眠時の頓用薬の使用状況を後方視的に検討した。期間は2022年4月1日~4月30日とし、睡眠時間は看護記録を採用し、翌日の日中まで覚醒しない日は未覚醒、入眠できない日は入眠困難と定義した。 平均年齢13.4歳(4-43)、男性19例、女性15例、基礎疾患は脳性麻痺8例、低酸素性虚血性脳症後遺症10例、硬膜下血腫後遺症4例、その他12例。
結果
睡眠導入剤使用は24例(70%)、未使用10例、単剤使用21例、2剤使用3例。 睡眠時間の記録がない3例と観察期間中に変更した1例は欠損値とした。薬剤の内訳はtriclofos sodium8例、suvorexant7例、nitrazepam5例、etizolam5例、risperidone3例、ramelteon2例、melatonin 1例、zolpidem1例。未使用者、単剤使用者、2剤使用者は各々、平均睡眠時間8.3時間、8.2時間、7.9時間、中途覚醒4.9日、6.7日、14日、頓用薬使用回数1.5回、2回、3.7回、未覚醒2.9日、3.9日、3.3日、入眠困難0日、0.2日、0日。
考察
Tanakaらは睡眠障害の改善は小児の筋緊張亢進の改善に寄与すると報告(Brain Dev. 1997)しており、Moreliusらは重症児(者)の睡眠障害と介護者の心身の不調を報告(Child Care Health Dev. 2014)している。当施設では睡眠障害がある重症児(者)は薬剤使用により睡眠時間と入眠困難は未使用と同等の結果となり、一定の改善を認めた。今後、適切な薬剤選択と具体的な用量の確立により重症児(者)と介護者の双方の負担軽減となることが期待される。