抄録
背景
一般健常人の栄養指標として最も広く活用されているものの一つとしてBMIがある。重症心身障害児(者)に対する栄養管理に決まった指標はなく、我々は経験的にBMI15-18程度を目安に栄養管理を行ってきた。枚方総合発達医療センター(以下、当センター)では、寝たきりから歩行・運動可能まで様々な活動レベルの人が存在するため、活動量別の栄養管理の必要性について検討した。
方法
当センターの全利用者に行っている栄養評価(以下、NSTスクリーニング)を用いる。このNSTスクリーニングは、BMI、脂肪層、筋肉量、血液検査、褥瘡の有無、運動量の項目を用いて栄養状態を4段階に評価している。当センターの投与カロリーとNSTスクリーニングを寝たきり、腹ばい可能、四つ這い、歩行可能の4段階の活動レベルに分けて比較した。また、カルニチン・亜鉛欠乏についても評価した。
成績
四つ這い・歩行可能な利用者の57%がBMI18以上で管理されてBMI17未満は20%であった。一方寝たきり・腹這いの利用者に関しては30%がBMI18以上、BMI14-18は48%であった。亜鉛欠乏に関して、潜在性を含めると約55%に存在した。カルニチンは経口摂取、経管栄養ともにその中央値はカルニチン欠乏の状態であり、血中遊離カルニチン濃度と筋肉量の評価は相関していた。
結論
身体活動能力が保たれている場合、一般健常人に近い指標での栄養管理が可能である。一方で身体の強い変形や活動量の制限を認める場合、様々な因子を考慮した栄養評価が不可欠であり、また微量元素の欠乏にも注意が必要である。亜鉛・カルニチンともに薬剤だけでなく、それらが強化された栄養剤でも補充可能となっている。リスク因子を適切に認識し、個々の活動量に応じた栄養管理が必要と考える。