抄録
はじめに
24時間の呼吸器管理下にあり、身体が大きく重い、骨や皮膚など構造上脆い、といった特徴をもつ超重症児者の施設生活においては、最大限のリスク回避が求められるため、「不動状態」が助長される傾向にある。この課題に取り組んだ「姿勢ケア」の一事例を報告する。
症例
19歳女性、140.5cm、30.8kg。重篤な呼吸摂食嚥下障害を有し、経鼻胃管栄養。腰椎の過度な前彎を伴う脊柱側彎と身体各部の関節拘縮が進行しており、褥瘡既往が多く、骨折歴もある。神経因性膀胱などの合併症に加え、体温調整能力低下も見られる。
経過
2020年10月入所当初、重度の褥瘡を繰り返していたため、除圧目的の専用マットレスを導入。褥瘡そのものは改善したが、臥位生活が中心になり不動傾向の改善が課題となっていた(2021年9月)。しかし現状の過ごし方の変化に対する病棟現場スタッフの不安があるため、より動的で多様性のあるポジショニングの提案は、一貫した情報共有のもと、繰り返し協業し、定着させていった。2021年11月には、呼吸状態が改善し体調が安定してきたため、ベッド上の半座位姿勢保持に取り組み、同年12月には、改造車椅子座位を導入し、難題であった移乗方法も安全性が確保された。この時期から大幅に抗重力姿勢の頻度が増え、肺のコンプライアンス改善にも影響した。
結果
「姿勢ケア」を本格的に導入し定着した時期から、体調不良による隔離が極端に減少し、また酸素療法の必要性が無くなったという変化が見られた。さらにベッド中心の生活から、散歩やドライブ外出など活動範囲を広げることができた。
考察
重症児(者)病棟における「姿勢ケア」の取り組みは、単にポジショニングの提案だけではなく、本人を取り巻く日々の24時間生活環境改善に向けた生活スケジュールの調整、安全な移乗方法、さらに活動の広がりの検討をも包括すべきであり、多職種連携を条件として効果的なものとなる。