抄録
はじめに
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の多岐にわたる問題の中核症状になっているのは「動きの欠乏」であり、様々な合併症状とからみ合い、深刻な二次障害につながる。これらのことを前提に、重症児(者)の生活支援を行う場合、我々は、「姿勢ケア」という包括的な概念を基にした多職種協業が重要であると考えている。今回はその取り組みの経過を報告する。
経過
2021年9月、呼吸ケアが必要な利用者を中心に、個別的に二次障害の進行経過と今後の予測分析のもと、現状の病棟生活状況を再評価した上で、追加的に効果的なポジショニングを創意工夫した。取り組み開始時より、24名の利用者に対して車椅子乗車を含め、平均4パターン計99個の多様なポジショニングを取り入れていった。その際、まずは病棟で一番人手を確保できる時間帯を有効利用し、多職種間で意見交換しながら、現実的で再現可能なものにしていった。
結果
本格的に24名に対し「姿勢ケア」が定着し始めた2021年において、前年の同時期と比較し、利用者が熱発日(37.5度以上でカーテン隔離状態)とされる総数が約27%減少した。これは、直接的な効果と断定できないが、自然排痰がスムーズになり、吸引回数や酸素療法の減少した利用者が次第に多くなってきたことを反映しているかも知れない。そして、「姿勢ケア」の重要性を多職種チームで共有し、業務負担になるのではなく、むしろ参画的な「姿勢ケア」に発展した。
考察
「姿勢ケア」を効果的なものにしていくために、(1)運動療法や呼吸リハの効果とポジショニングを組み合わせ、活動も含めて支援する包括的なプログラム、(2)必ず生じることが予測される2次的呼吸障害への先手を打った対策としての多様性のあるポジショニング、(3)個別的24時間の生活環境改善という視点で、多職種協業体制を構築し継続していくことが重要である。