日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-2-④-2 重症心身障害児(者)における尿中カルシウム/クレアチニン比測定の臨床的有用性
稲田 浩蘆野 二郎尾島 麻希斎藤 佳乃服部 妙香渡邊 早苗山元 康敏松下 彰宏田中 勝治服部 英司
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2022 年 47 巻 2 号 p. 299

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抄録
はじめに 重症心身障害児(者)における尿中カルシウム/クレアチニン比(以下、uCa/uCre ratio)の臨床的有用性について検討した。 対象・方法 2020年12月から2022年6月にかけて、184名(10ー80歳、男性89名、女性95名)の対象者各々に1ー5回、のべ568回の測定を行い各臨床指標との関係を検討した 結果・考察 対象者のuCa/uCre ratio値平均は対数正規分布を示し、中央値0.27、平均値0.34で、一般集団よりも高かった。期間をあけて4回以上測定した者(44名)での個人内標準偏差平均は0.12、変動係数43%であった。年齢との相関は認められなかった。女性は、男性よりやや高い傾向が認められた。uCa/uCre ratio値は、前後一週間以内に測定された血清クレアチニン値と逆相関を示し、筋肉減少による低クレアチニン値が影響を与えている可能性が示唆された。しかしながら、血清カルシウム値とは一定の相関が認められなかった。検討期間中にビタミンD製剤投与等を契機に高カルシウム血症を来したケースにおいても、特段高い値を示さず、高カルシウム血症の指標とはなりにくいと思われた。また、uCa/uCre ratio値は運動状態(寝たきり、座れる、歩けない、歩ける)の違いにて明らかな差が認められた(Kruskal-Wallis検定)。特に寝たきりの者(大島分類1、4、9)での中央値は0.29、平均値は0.39と、他の運動状態の者より有意に高かった。尿路結石をもつ者(42名)におけるuCa/uCre ratioの中央値は0.33で、結石のない者(142名、中央値0.23)に比して有意に高く(p<0.01、M-W検定)、因果関係の詳細は不明であるが、尿路結石の背景となる指標として重要と考えられた。
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© 2022 日本重症心身障害学会
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