日本重症心身障害学会誌
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O-2-④-1 敗血症性ショックに高血糖高浸透圧状態を合併した1例
小田 望口分田 政夫山下 久美子木内 正子永江 彰子藤田 泰之
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2022 年 47 巻 2 号 p. 298

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抄録
はじめに 高血圧高浸透圧状態は感染症などが契機となり高血糖と脱水をきたす糖尿病患者における重大な合併症である。今回尿路感染症による敗血症性ショックに高血糖高浸透圧状態となり血管内脱水をきたし、低血圧が持続した患者を経験したので報告する。 症例と経過 原因不明の重症心身障害者の男性。妊娠分娩歴に特記すべき異常なし。独歩1歳、その後精神運動発達の遅れを認めた。7歳でてんかん発症、13歳〜31歳まで強直発作、強直間代発作を頻回に認めた。18歳より座位不安定となり、21歳より座位困難、その後寝たきりとなり運動機能の低下を認めた。また嚥下障害も進行、39歳より経管栄養となる。50歳頃より2型糖尿病を発症、普段は経口血糖降下剤を3剤内服しておりHbA1Cは5.0-5.5程度であった。今回、20XX年4月30日より39℃の発熱を認め、尿路感染症に対して抗生剤静注を開始したが、半日ほどで血圧 84/56mmHgと敗血症性ショック状態となり、ドパミン持続静注を開始した。DICも合併し、抗凝固療法を要した。発熱は1日で解熱し、炎症反応も第7病日には白血球は32800/μlから5900/μl、CRPも>20mg/dlから2.4mg/dlまで改善、DICからも回復した。しかし、低血圧が持続し、ドパミンを10γから減らせなかった。一方、血糖>300mg/dlを認め、インスリン静注を併用、増量するも血糖が安定するまで数日を要した。第14病日にようやく血糖<200mg/dlになり昇圧剤を減量し始めることができた。第24病日にドパミンとインスリンを中止できた。 考察 感染症の治療は奏功したが、血糖の調節が難しく、高血糖による血管内脱水が持続して、昇圧剤使用を減らせない症例を経験した。早期よりインスリンによる速やかな血糖コントロールと高浸透圧利尿に対して生食や低糖液の輸液を必要十分量行い、血管内脱水を起こさないように慎重に管理する必要があった。
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© 2022 日本重症心身障害学会
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