抄録
はじめに
重症心身障害児(以下、重症児)では、成長とともに高度側弩に伴う体幹の変形などにより、消化管も変位がみられることが多い。特に、十二指腸は後腹膜に固定されているため側弩の影響を受けやすく、腸管の伸展・扁平化、SMA症候群などにより消化管通過障害をきたす場合がある。これに対してEDまたはGJチューブなどで管理される症例が多いがチューブ管理や注入速度などの問題でQOLが低下していることも多い。今回、胃空腸吻合術を施行し、良好な経過を得た2例について報告する。
症例1
先天性ニューロパチー、脳性麻痺の10歳男児、側弯進行に伴う胃の変形により幽門部通過障害をきたしEDチューブで管理。チューブ交換が困難になってきたため、胃瘻造設術+胃空腸吻合術(Roux-en Y再建)施行した。術後、吻合部の通過障害をきたし、GJチューブによる管理を必要とした。その後、徐々に改善し胃瘻投与のみでの管理が可能となった。
症例2
Leigh脳症、13歳女児。従来は経口摂取可能であったが、胃腸炎を契機に頻回の胆汁性嘔吐を繰り返すようになりEDチューブ挿入管理となった。チューブを挿入するとすぐに嘔吐は軽快し、液体の経口摂取は可能であったが固形物の食事を再開すると嘔吐が悪化した。側弯により十二指腸下行脚から水平脚移行部に狭窄を認めた。通過障害改善目的に胃空腸吻合術(Roux-en Y再建)を施行した。術後経管栄養から経口摂取へ切り替え可能となり、現在は固形物摂取も問題なくできている。
考察
重症児において側弯進行による消化管通過障害をきたし、栄養管理に難渋する場合は患児および介護者のQOLを改善するために積極的な外科治療を選択肢に入れるべきである。