抄録
背景
現在最も使用されている腎機能の指標は血清クレアチニン値(SCr)である。しかしSCrは筋肉量に影響を受けることが知られており、筋肉量の少ない重症心身障害者では低値となることがしばしばあり、SCrを基にした推算式では腎機能が過大評価されてしまう恐れがある。重症心身障害者の正当な腎機能評価を行うため、24時間蓄尿によるクレアチニンクリアランス(24hCCr)から算出した推算GFR(eGFR)を基準とし、SCrや血清シスタチンC(CysC)を使用したeGFRに加え、小児式ではあるが血清β2-microglobulin(β2MG)を用いたeGFRとの比較検討を行った。
方法
一宮医療療育センターに入所している20歳以上の男女13名を対象として24hCCrを施行した。24hCCrを基に算出されたeGFR(24hCCr-eGFR)を基準とし、同日に採血した検体のSCr、CysC、β2MG値から算出した各々のeGFRとの相関性を検討した。また妥当性を検証するために、mean error(ME)、 root mean square error(RMSE)およびP30を用いて比較検討した。なお、重症心身障害者の筋肉量は正常の50%程度まで落ちる可能性がある事を考え、蓄尿のクレアチニンが正常値の30%以下のものは除外した。
結果
24hCCr-eGFRとの回帰直線の決定係数(r2)は、SCr-eGFR(r2= 0.65)、Cys-eGFR(r2=0.52)、β2MG-eGFR(r2= 0.39)であった。妥当性の評価において24hCCr-eGFRを基準とするMEではSCr-eGFR、Cys-eGFR、β2MG-eGFRにおいて、83.7、15.6、19.4ml/min/1.73 m2であり、RMSEは101.1、29.0、35.4、P30は15.4、76.9、69.2%であった。
結論
Cys-eGFRとβ2MG-eGFRにおいては、24hCCr-eGFRと値が近似しており、腎機能評価に使用するのに妥当と考えられる。一方SCr-eGFRにおいては、相関性はみられるが、24hCCr-eGFRよりかなり高値となるため、そのままの値を腎機能評価に使用する事は適切ではないと思われる。SCr-eGFRをどのように補正するかの検討は、今後の課題である。