抄録
目的
当センター入所利用者について、生活の場である病棟内では、頻回な胃瘻PEGの自己抜去、他利用者や職員への不適切な関わり等が行動問題として挙げられている。心理職の関わりでは、これまで個別支援の中で他者との適切なコミュニケーション行動の拡充を試み、徐々に成果が得られている。そこで、本研究では、病棟生活や個別支援で行える支援を探ることをねらいとして、病棟内でのPEGの自己抜去の場面を行動観察し、行動問題について応用行動分析に基づく分析を行う。
対象者
24歳男性、在所歴22年。脳性麻痺、知的障害、摂食障害(胃瘻)、てんかん、難聴の診断。知的発達は田中ビネー知能検査Vで精神年齢3:4、横地分類はD5-Dであった。
方法
1.関係者情報アセスメント
2.直接またはビデオ撮影による行動観察を行い、行動問題が維持されている随伴性の分析を行う。
まとめ
関係者情報として、昨年度に職員3名に胃瘻PEG自己抜去についてMAS動機づけ尺度による評定を依頼した。その結果から、要因として職員2名は感覚要求、職員1名は注目要求を上位に位置付けており、評定者による行動問題の捉え方に差異があることがうかがわれた。同時期に実施した機能的アセスメントインタビューや直近の記録からは、食事時間、入浴時間、排泄ケア、起床時などの職員の入れ替わりの時間帯に行動問題が起こりやすいことが示された。このことから、職員の入れ替わる時間帯に行動問題が生起しやすいと予測し、有効な対応について整理することを目的に行動観察を行うこととした。
今後行動観察によって、行動問題の生起・不生起の先行事象と後続事象について分析し、行動の持つ機能を明らかにしていきたい。また、個別支援では病棟において行動問題にかわる適切な行動を獲得・般化していくことを目指し、病棟職員間と共通認識を持ち、有効な支援を検討していきたい。