日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-2-①-2 重症心身障害児(者)への呼吸機能改善を目的とした背上げ姿勢の検討
田代 峻一東 菜奈子米倉 照代澤田 一美糸数 直哉
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2022 年 47 巻 2 号 p. 327

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抄録
はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))において、安楽で豊かな日常生活のために呼吸管理姿勢は重要であり、腹臥位系姿勢が有用とされるが、それ以外の姿勢バリエーションも重要である。背上げ姿勢は臥位に比べ腹部臓器による横隔膜圧迫が軽減され、呼吸機能面で有用とされるが重症児(者)に呼吸管理を目的に使用したという報告は少ない。今回、呼吸管理目的で背上げ姿勢を実施している重症児(者)に対し、角度ごとの詳細な評価を行った。 方法 対象は呼吸管理が必要なA氏(40代女性、脳性麻痺)、B氏(30代男性、頭蓋内出血後水頭症)、C氏(20代後半女性、てんかん性脳症後遺症)、全員大島分類1。背上げ角度0/10/20/30度でモニター着用し動画撮影を行い、SpO2、脈拍、呼吸リズム、横隔膜筋厚を計測した。呼吸リズムは動画より視覚的に評価、横隔膜筋厚は超音波画像診断装置(vscan extend:GEヘルスケアジャパン社)を使用し中腋窩線上の第8・9肋骨部で計測した。解析は画像解析ソフトImage Jを使用、統計は一元配置分散分析、多重比較にはTukey法、統計ソフトはJSTATを使用し有意水準5%とした。 結果 背上げ角上昇により、A氏は有意なSpO2上昇、脈拍低下、横隔膜筋厚は吸気時上昇がみられた(p<0.01)。B氏は有意な脈拍低下(p<0.01)、横隔膜筋厚は吸気時に0度と20度、0度と30度で低下(p<0.05、p<0.01)、呼気時に0度と20度、0度と10/30度の比較で低下がみられた(p<0.05、p<0.01)。C氏は有意なSpO2上昇、脈拍低下がみられた(p<0.01)。全対象者で呼吸リズムの変化はみられなかった。 考察 背上げ角度上昇によりSpO2上昇、脈拍低下傾向が確認された。横隔膜筋厚は吸気時増加が予測されたがA氏は吸気時に減少した。これは代償的な胸郭運動の影響が予測され、背上げ姿勢により変化した可能性がある。今回の対象者では背上げ姿勢は呼吸機能に一定の変化をもたらすことが確認された。 申告すべきCOIはない。
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© 2022 日本重症心身障害学会
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