日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: SII-2
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分子医真菌学の新展開
Cryptococcus neoformans の細胞周期とその遺伝子
*竹尾 漢治
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抄録
Cryptococcus neoformans (クリプトと略記)は、深在性真菌症の重要な起因菌である。また、我々の研究から本菌の細胞周期制御は、真核生物の単純なモデル Saccharomyces cerevisiae と異なることが分かっている。演者は、先ずクリプトの細胞周期制御の特徴を述べ、次に細胞周期制御の中心的遺伝子のクリプトからのクローニングとこの遺伝子の特徴を述べる。
出芽酵母では細胞分裂により大きな母細胞と小さな娘細胞ができる。S. cerevisiae では、この小さな娘細胞が生長して一定の体積以上になると、細胞周期の”スタート”がかかり、DNA 合成開始、出芽開始、紡錘紡錘極体の複製(核分裂の開始)を引き起こす。このように S. cerevisiae の“スタート”は強力、いいかえると細胞周期は融通がきかない。クリプトでも指数増殖期では S. cerevisiae と同様に DNA 合成開始に引き続いて出芽し、DNA 合成完了後核分裂が起った。しかし、強いストレス下では様相が一変した。溶存酸素濃度低下(クリプトは発酵能を欠く)では、細胞が大型化、細胞壁が肥厚化、さらに、ほとんどの細胞は未出芽であるにもかかわらず G2 期にあった。同様の変化は栄養条件の悪化した定常期への移行期でも、またラット肺への感染時でも認められた。細胞周期制御の中心に位置するサイクリン依存性キナーゼ CDC28/cdc2 ホモロッグ(または Cdk1 )の遺伝子をクリプトからクローニングし、そのアミノ酸配列を決定した。S. cerevisiaeSchizosaccharomyces pombe の CDC28/cdc2 と高い相同性(アミノ酸ベースで約 70%)を示した。GDSEID モチーフ即ち Glycine、Aspartic acid、Serine、Glutamic acid、Isoleucine、Aspartic acid よりなる配列は特異的で、これまで知られているCdk1全てに共通しているが、Cdk1 以外の Cdk では保存されていない。単離したクリプトの Cdk1 でも本モチーフが保存されていることより、本遺伝子は確かに CDC28/cdc2 ホモログということが出来た。PSTAIRE モチーフ即ち Proline、Serine、Threonine、Alanine, Isoleucine、Arginine、Glutamic acid 配列部位はサイクリンとの結合部位であり、ほとんどすべての Cdk1 に共通している保存性の大変高いサイトである。しかし、本菌のCdk1では本来のPSTAIREモチーフ中で、Alanine が Serine に置き換わっていた。PSTAIRE モチーフが完全には保存されていないのに、Cdc28/cdc2 活性欠損を相補できる Cdk1 としては、これまで線虫 Caenorhabditis elegans、細胞性粘菌 Dictyostelium discoideum、原虫Leishmania major のみであり、クリプトのものはその第 4 例であった。本菌の Cdc28/cdc2 の特異性を示すと言うことが出来る。
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© 2005 日本医真菌学会
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