抄録
我が国の T. tonsurans 感染症は、格闘技選手を中心に急増し大きな問題となっている。我々は拡大を阻止するため、大学柔道部の現場(監督)から、治療と感染予防策を検討してきた。しかし一度のみの治療では、部内で繰り返し発症したり、また卒業後の選手が一般社会に本症を持ち込むことも危惧され、新入・卒業生の羅患状況の調査が重要である。
【対象と方法】集団感染した大学の柔道部学生および卒業生延べ 54 名(大学生 26 名、卒業生 28 名:2005 年 4 月現在)を対象として、調査用紙と Hairbrush 法による頭髪の本菌保有を調査した。
【結果】第 1 回検査時(2002 年 11 月)の 31 名は、当初 11 名(35%)、本菌陽性であった。本群は日常の感染予防指導を受けながら多くの試合や合同練習を継続し、18 ヶ月に 9 回に亘る集団検診と陽性者の治療を行い、全員が陰性化し、体部白癬の発生は消失した。しかし全員での検査間隔を 10 ヶ月間とった 2005 年 4 月の検査では新入生を含む 3 名が陽性を示した。一方、2004 年度までの卒業生 28 名を対象に同調査を行ったところ全員が検査陰性であった。
【考案】本症について充分に啓蒙された柔道部員、卒業生は、この感染拡大予防策が有効と考えた。しかし、新入生に陽性者があることから、本症の撲滅は難しく、今後も柔道界全体で、厳重な取り組みが必要であると痛感している