日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: SIV-2
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真菌感染と自然免疫
真菌多糖の免疫系による認識とその活性化作用
*安達 禎之大野 尚仁
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抄録

Candida albicans などの真菌の細胞壁には (1→3)-β-D-glucan が含まれている。β-glucan に対する免疫認識は主に自然免疫系により担われていると考えられており、樹状細胞やマクロファージに発現する C-type レクチンに属する Dectin-1 は β-glucan に結合する膜タンパク質として菌体の認識に関わっている。しかし、真菌感染あるいは真菌に対応する免疫機構が関連する疾患において Dectin-1 がどのような役割を演じているかは明確ではなく、これらを明らかにすることは感染防御や炎症性疾患の発症と対策を考慮するために重要であると考えられる。まず、β-グルカンは構造に多様性があることから、Dectin-1 がどの様な構造特異性に基づき真菌多糖を認識するのか検討した。Dectin-1 は Candida 由来の (1→6)-long branched (1→3)-β-D-glucan と Schizophyllum commune 由来の (1→6)-monoglucosyl branched (1→3)-β-D-glucan に結合し、3 重ラセンの (1→3)-β-D-glucan により強い親和性を有していた。次に Dectin-1 の β-glucan 認識能と細胞活性化能を解析するために、Dectin-1 変異体および Dectin-1 モノクローナル抗体を作製し、結合活性に関するアミノ酸残基を他の C-type レクチンと比較した。その結果、Dectin-1 は DC-SIGN などのmannose 結合性 C-type レクチンとは全く異なるアミノ酸残基を用いて、Ca2+ 非依存的に β-glucan を認識することが示された。Dectin-1 による細胞の活性化機構の解析には従来、β-glucan を主成分とする酵母 Saccharomyces cerevisiae 由来の zymosan が汎用されている。zymosan は、TLR2 発現細胞に作用し NF-kB の活性化を引き起こす。Dectin-1 は TLR2 発現細胞において zymosan の NF-kB 活性化能を促進した。この促進作用は β-glucan 非結合性 Dectin-1 変異体では起こらないことから、β-glucan の認識が重要であった。一方、zymosan のクロロホルム-メタノール処理物は Dectin-1 結合性を保持しているにも関わらず TLR2 との共発現でも NF-kB を活性化できなかった。Candida 由来の精製 β-glucan も同様に共発現細胞でも全く NF-kB の活性化を示さないことから、Dectin-1 による β-glucan 結合シグナルのみでは NF-kB を活性化するには不十分で、Dectin-1 以外の受容体からの NF-kB 活性化シグナル誘導も重要であることが示唆された。

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© 2005 日本医真菌学会
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