日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: WS-2
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外科,救急・集中治療領域における真菌感染症の現状と対策
集中治療室における深在性真菌症に対する遺伝子診断の応用
*有嶋 拓郎
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抄録
集中治療室に入室する患者はさまざまな病態や病期であり、しばしば感染症の同定や治療に難渋する。深在性真菌症は頻度こそ少ないがこうした疾患のひとつである。われわれは、神戸らの開発した Candida 属 5 種と Aspergillus fumigatus を同時に同定できる測定系を用いて真菌の遺伝子診断を積極的に臨床的応用してきた。
(I)臨床的意義 10 例の臨床上深在性真菌症が強く疑われた症例に対して診断と通常の検査を比較したところ遺伝子診断は培養検査に比較して良好な感度(p<0.05)で白血球数や CRP は高い傾向にあった。血液、腹水、胸水、髄液などの検体からの PCR 陽性結果は臨床所見に合致するものであった。本測定系での測定感度は 50-100 CFU/ml 程度であったことから、常在菌との区別の困難な痰、尿の陽性例においても相当量の菌数の存在を意味しており治療開始の判断材料となった。さらに真菌の多重感染が認められると、その後の予後は単感染のときより有意に悪くなり、真菌の単感染から多重感染が成立する時期が薬剤投与の至適時期と考えられた。
(II)工夫 検率出の向上のため深在性真菌感染症の頻度が高い化学療法・放射線治療下の小児悪性腫瘍症例を対象に、血液検体を 24 時間以上培養した後に遺伝子診断することで診断率の向上が可能か否かを検討した。5 人の小児悪性腫瘍患者(年齢 3 から 14 歳)の 0.5 ml の静脈血 14 検体に対して PCR を実施し、うち 11 検体は培養検査も同時に実施した。結果は 14 検体中 10 検体 (71%) で真菌遺伝子を検出し 2 検体で複数感染も認めた。血液培養を実施した 11 検体中 7 検体 (64%) では遺伝子診断が陽性であったが、培養検査は全て陰性であった(χ2=5.63、p<0.05)。1 日培養の効果を実証すべく in vitro にて C. albicnas を SA 培養ボトル(日水製薬)で 34℃ 24 時間培養してコロニー形成試験を実施したところ 104 から 105 倍に増殖し、遺伝子診断の感度も 103 程度上昇した。
 現在、発熱持続や白血球の減少といったイベントにあわせて検体を採取し、36℃ の恒温槽での培養を加えて遺伝子診断を実施している。ベッドサイド検査と違いまだ十分簡便とはいいがたいが適中率を向上させることで多種同時測定系の臨床意義は高まっていくものと思われる。
共同研究者:武澤 純1,2,神戸俊夫3,菊池韶彦31名大病院・救急部・集中治療室,2名大・院・救急医学,3名大・医・分子標的治療学)
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© 2005 日本医真菌学会
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