内科領域の主な真菌症として、カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス・ネオフォルマンス症、接合菌症、新興真菌症が挙げられる。これらの原因菌のうち、以下のものについて解説する。
1.アスペルギルス症原因菌
アスペルギルス症原因菌として最も重要な菌種は A. fumigatus であり、原因菌の約 70% を占めている。その他、病原菌として頻度が高い種は A. niger、A. flavus、A. terreus、A. nidulans などである。また、近年、Aspergillus 属のテレオモルフ teleomorph (有性型)である Neosartorya、Emericella、Eurotium 属に含まれる種が病原菌として報告されている。Aspergillus 属のコロニーは、分生子の形成にともない緑色、黒色、黄色、黄緑色、茶色、白色など菌種特有の色調を帯び、菌種によっては菌核を形成する。形態的には、分生子の連鎖構造である分生子頭、分生子形成構造の総称であるアスペルジラに着目する。とくに、分生子柄の先端部である頂のうの形状・分生子形成細胞(フィアライド)が単列もしくは 2 列であるか、分生子の形状、大きさによって種が分類されている。Aspergillus 属のテレオモルフは、アナモルフ(無性型)の形状によって属が分類され、種の分類は子嚢胞子の表面構造が指標となっている。
2.接合菌症原因菌
接合菌症の原因となる真菌は、Rhizopus、Rhizomucor、Absidia および Cunninghamella 属にほぼ限られている。その中で、Rhizopus oryzae、R. microsporus var. rhizopodiformis が多く、ついで C. bertholletiae が分離される。Mucor 属はきわめて稀で誤同定もある。上記 4 属の分類の主な指標は、仮根の有無と位置、胞子嚢柄の分岐の有無、アポフィシス(胞子嚢柄の先端部分の構造)の有無、胞子嚢の形である。多くの接合菌類は性的にヘテロタリックで、性の異なる2つの株(+、 - )を交配することによって接合胞子を形成し、これは種の特徴を示している。
3.新興真菌症原因菌
新興真菌症の原因となる真菌として、Pseudallesheria boydii、Paecilomyces 属、Fusarium 属、スエヒロタケなどを供覧している。P. boydii は楕円形_から_紡錘形、平滑、褐色の子嚢胞子とScedosporium、Graphium、Sporothrix 型の 3 種の分生子形成様式が特徴である。Paecilomyces 属は Penicillium 属によく類似しているが、コロニーの色調と、フィアライドの先端が細まり、ペニシリ(分生子形成構造の総称)が不規則、散開状になる点が異なる。