抄録
呼吸器真菌感染症は、近年においても免疫不全患者の重大な合併症であり、又、肺に既存の器質的障害を有する患者にとっては最も難治性の感染症の 1 つである。昨今、新しい診断技術が臨床現場に導入され、その活用によって一部の真菌感染症では早期診断とそれに基づく早期治療が可能となり、予後や臨床経過の改善も得られるようになっている。さらに近年相次いで開発され臨床応用が開始された、あるいは開始されようとしている新規内用抗真菌薬は、その治療成功の可能性を拡大するものとして大いに期待もされている。しかし、他方、この領域における臨床的な検証試験は我国では不十分で、十分な根拠なく経験的な併用療法や高用量療法が容認されているのも事実である。逆に包括医療制度が進む高次医療施設では、経済的な側面から種々抑制がかかっている事も事実であり、エビデンスに裏付けられた、より論理的な抗真菌薬療法を実施していく事が、この問題を解決する最良の方法であると考えられる。昨今の目覚しい診断技術、治療薬の開発の裏に潜む問題点をこのセミナーでは幾つか明らかにしたい。