抄録
[目的]C. neoformans の病原因子に関しては未知の部分が多く、特に経気道感染に関係する病原因子の検討は少ない。前回我々は経気道感染に関与していると考えられる 41 個の遺伝子をクローニングし、このうち 37℃ での発育能に関連している cis-prenyltransferase 遺伝子破壊株(B4500CISD)を作成した。今回 B4500CISD と親株の B4500 の病原性の変化についてマウス感染モデルを用いで検討した。[方法]C. neoformans (B4500、B4500CISD) をトリアムシノロンにて免疫抑制をかけたマウス(CDF1 female)に経気管支的に感染させ、生存率を観察した。また同じ株を用いて免疫抑制をかけていないマウスに経静脈的に感染させ生存率を観察した。[成績]経気道感染モデルにおいて B4500CISD 株は B4500 株と比較してマウスの生存期間が延長する傾向がみられた。しかし、経静脈感染モデルでは逆に B4500CISD 株は B4500 株と比較して生存期間が有意に短縮した。[考察]経気道感染モデルにおける B4500CISD 株の病原性は親株と比較して低下した。これは病原因子の一つといわれている 37℃ での発育能に関連した遺伝子を破壊した株であることから予想された結果であった。しかし経静脈的感染モデルにおける逆の結果は現在のところ機序は明らかではない。ミュータントは液体培地で集塊を形成しやすいことが判っており、この集塊が塞栓することで感染が成立しやすくなっている可能性もある。病理学的検討もふまえて報告する。