抄録
Histidine kinase(HK)は多くの真菌でフェニルピロール系抗真菌剤に対する感受性や浸透圧調節に関わる MAPK シグナル伝達経路を制御することが知られているタンパク質リン酸化酵素である。今回,ヒト病原真菌 Cryptococcus neoformans の HK をコードすると推定される遺伝子 CnNIK1 をクローニングし,構造解析を行った。塩基配列,アミノ酸配列を用いた相同検索の結果,アカパンカビ,イネいもち病菌をはじめとする真菌類の HK 遺伝子の活性部位を中心に高く保存されていた。B4500 由来の栄養要求性菌株 TAD1 を用いて,栄養要求性マーカー遺伝子と CnNIK1 遺伝子との置換による遺伝子破壊を行い,形質転換株TAD12を取得した。フェニルピロール系抗真菌剤フルジオキソニルに対する感受性について比較したところ,YPD 液体培地を用いた場合の野生型株に対する MIC は 3 μg/ml であったのに対して,TAD12 では MIC 値が 48 μg/ml よりも大きく,本菌の CnNIK1 遺伝子は他の真菌類と同様にフェニルピロール系抗真菌剤に対する感受性に関与していた。一方,高浸透圧条件下での生育は野生型株と差異が見られなかった。浸透圧調節を制御する MAPK である Hog1 のリン酸化状態を比較したところ,野生型株より低レベルなリン酸化が確認された。現在,動物モデルを用いた感染実験を行い,本遺伝子の病原性への関与を検証中である。