抄録
Cryptococcus neoformans はヒト病原性酵母で、担子菌類に分類される。これまでの我々の研究室での研究から、その細胞周期制御機構はモデル酵母 Saccharomyces cerevisiae のものとは異なることが推測されている。本研究では、C. neoformans の標準液体培養条件下における細胞周期の時間的側面を明らかにすることを目的とした。指数増殖期における構成細胞の出現頻度、個々の細胞の定量的 DNA 測定、タイムラプス法により解析を行った。その結果、指数増殖期における C. neoformans の倍加時間は、平均 132 分、G1,S,G2,M 期のそれぞれの時間は、平均 71 分、18 分、25 分、18 分と推定された。DNA 合成は、出芽の前に開始され、芽の大きさが母細胞の 1/4 の時には終了していると思われた。また、本培養条件下における母細胞、娘細胞の倍加時間は、それぞれ約 87 分、180 分と推定され、娘細胞は母細胞の約 2 倍の倍加時間を要すると考えられる。これらのデータは、今後 C. neoformans の細胞周期の研究を進めていく上での基礎をなすと考える。