抄録
目的:アレウリオ型分生子を有する真菌には、皮膚糸状菌(Trichophyton 属、Microsporum 属等) や病原性の高い Histoplasma 属等、いくつかの重要な病原真菌を含み、その形態形成メカニズムの解析は非常に有意義である。今回、他の真菌に比べ大分生子産生が豊富である点や生育期間が速い点に着目し、M. gypseum の大分生子を観察しアレウリオ型分生子形成のメカニズムを考察するためのモデルとした。方法:Microsporum gypseum IFM 41113 を GTYA 培地上で 25℃、4 日間スライドカルチャーし、カバーガラスに付着した菌糸体および分生子をラクトフェノール・コットンブルー液でマウントし検鏡した。また培養後のカバーガラスを固定後、DAPI(1 μl/ ml)水溶液でマウントし蛍光顕微鏡で核を観察した。結果、考察:大分生子は成熟とともに隔壁が生じ 2 から 6 室となったが、核の数は成熟の度合いに関わらず 1 室あたり 2 から 20 個であった。大分生子の成熟は表面構造の形態的な変化を基に推定したが、隔壁の数とは必ずしも対応しなかった。分生子柄は 2、3 の細胞からなり、分生子直下の 1 細胞のみが大分生子の成熟に従い退縮した。一方この部分において、細胞壁の退縮開始時では核には変化が見られなかったが、退縮がさらに進行した時点では、核の存在が認められなかった。このことからこの細胞は、核の支配下で細胞壁分解酵素などが産生され、最後に核も分解され、早期の老化と死が起こっている可能性が示唆された。