日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
セッションID: P20
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オクロコニス属の新種に原因する養殖ヤマメの大量死亡例について
*畑井 喜司雄佐野 文子西村 和子
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抄録
養殖ヤマメに不完全菌類のOchroconis属菌に原因する慢性的に死亡する症例が発生した。罹病魚の外観は腹部膨満を呈する程度であったが、開腹すると腎臓が腫大し、部分的に白斑状を呈していた。腎臓内部には多数の淡褐色の菌糸が繁殖しており、病理組織学的に肉芽種を形成していた。患部からはサブロー寒天培地などで1種類の菌を培養することができた。分離・培養された菌は3隔壁を有する淡褐色の長楕円形の分生子を仮軸状に産生し、分生子の表面には細い棘状突起を有した。これらの特徴から本菌は、Doty and Slater(1946)によって米国のマスノスケから報告されたOchroconis tshawytschaeに近似する種であると考えられた。
 そこで基準株であるATCC 9915とヤマメ株とを走査電顕で詳細に形態を比較検討した結果、ヤマメ株は疣状突起が1種類であるのに対して9915株は大小2種類の突起が存在した。また分生子の形状は、9915株の方が、ヤマメ株よりも細長かった。また、集落の形状や色調も若干異なった。
 さらにヤマメ株のD1/D2 LSU rRNA遺伝子の配列は既知種の配列とは異なり、相同性は80%であった。なお、他の病原性黒色菌の配列にヤマメ株の配列を加えてクラスター解析を行った結果、他のOchroconis属菌と同一のクラスターに位置した。以上のことからヤマメ株はOchroconis属の新種であると判断した。
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© 2006 日本医真菌学会
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