抄録
これまで、臨床材料から分離されるNocardiaの菌種は生理生化学的特徴の乏しいN. asteroidesが最も多く、次いでN. farcinica, N. brasiliensis, N. novaの順であった。近年、16S rRNA遺伝子の塩基配列の相同性による、Nocardiaの再分類が盛んに行われ、多くの新種が報告されている。N. abscessus, N. asiaticaなどがN. asteroidesから再分類され、新種として確立された。N. asteroidesはNocardiaのType speciesであり、1800年にはじめて報告されている。しかし、本菌種は生理生化学的特徴が乏しいため、多くの菌株がN. asteroidesとして同定されてきた(sensu lato)。我々は真菌センターでN. asteroidesとしての保存されてきた菌株の再分類を行い、これまでに16種の新種の報告を行ってきた。真菌センターにN. asteroidesとして保存されてきた200株について再分類および再同定を行った結果、N. asteroides sensu strictoと同定できる株は、46株と極めて少ないことが明らかになった。しかし、最近の臨床由来菌株の中に典型的なN. asteroides の菌株(sensu stricto)の存在が明らかになったので、併せて報告する。