抄録
【目的】すべての微生物に保存され、且つ16S rDNA遺伝子配列 (16S rDNA) よりも進化速度が早いとされるDNAジャイレースのβサブユニットをコードする遺伝子 (gyrB ) 配列を用いた同定・分類研究が1995年に報告された。その報告以降、同定法で最も確実とされるDNA-DNAハイブリダイゼーション法とgyrB の相関性が高いという結果も得られてきている。本研究では、このgyrB 遺伝子配列をNocardia 属全種で決定し、その有用性を検討した。
【方法】当センターで保存されているNocardia 属全種 (60種) を対象として、報告されているgyrB 遺伝子の Universal primer を用いてgyrB を増幅後、シークエンサー (ABI PRISM 3130) で配列を決定した。決定した配列はGENETYX、ClustalWを用いて解析を行い、系統樹を作成した。
【結果および考察】Nocardia 属放線菌の菌種間のgyrB の相同性は82.417-99.917%と16S rDNAの相同性と比べて広範囲であった。この結果から16S rDNAよりも詳細な分類が可能になると考えられる。またgyrB 配列内に種特異的な部分が見られたため5-600bpのみの配列を用いた同定・分類の可能性や菌種特異的なprimerの作成等臨床への応用が期待される。