抄録
33歳、女、看護師。既往歴に、足白癬を思わせる症状はない。約10年前より右第1趾爪の変色、変形をみとめる。現症は、右第1趾爪甲の内側1/3が、縦に黄白色の線状を多数認め融合する。初診時、直接鏡検にて真菌要素陽性、培養にて、アスペルギルス属の菌が得られたが、正確な同定がなされず、汚染菌と判断した。イトリゾールパルス療法を施行したが、15カ月目、難治であったため、病的爪甲を全て掻爬し、得られた病爪について、直接鏡検、真菌培養および分子生物学的検討を行った。直接鏡検では、2分岐性に増殖する不規則に太い菌糸を認め、アスペルギルス属菌が分離された。rDNAの塩基配列解析では分離菌株の配列と爪由来の配列は、両者とも一致した。分離菌は、形態学的にAspergillus sydowiiと推定され、分子生物学的に確認された。本菌による爪真菌症は、文献上17例を数えるが、臨床像や経過の記載があるものは4例のみであった。それらの臨床的な特徴をまとめて報告する。