日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
セッションID: P86(SIV-5)
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ポスター(括弧内番号はセレクテッド・シンポジウム発表を示す)
猫免疫不全症候群(FIV:猫エイズ)にみられた Colletotrichum gloeosporioides の全身感染例
*村田 佳輝森 俊士佐野 文子鎗田 響子高山 明子西村 和子亀井 克彦
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抄録

Colletotrichum gloeosporioides は分生子果不完全菌類 Coelomycetes に属し,植物の炭疽病菌で,ヒトでの感染は角膜真菌症,深部皮膚症例の数例が報告されているが,動物症例の報告はみられない.今回経験した症例は日本猫,避妊雌,10歳.1ヶ月前より元気,食欲の減退と左前肢端の自潰を伴う肉芽腫性病巣,鼻稜の腫脹で来院した.腹腔内に20 x 30 mmの腫瘤を触知したため,腹部X線およびエコー検査を行い,腫瘤を確認した.血液検査では白血球増多と血小板減少を認め, BUN,無機リン,AST,ALTが高値を示した.血清学的検査ではFIV陽性,FeLV陰性であった.腹腔内腫瘤のFNAで多数のリンパ球と菌糸を認め,左前肢端の潰瘍及び鼻稜の腫脹部分の塗抹でも同様の菌糸を認めた.左前肢端の潰瘍を抗生物質ポテトデキストロース寒天培地で培養したところ,黒色の付着器,単細胞性分生子をともなった表面白色で裏面深緑色の集落が分離され,D1/D2 領域の配列はAJ301909と100%一致し C. gloeosporioides と同定した.また,鼻稜の塗抹検体からも同遺伝子の部分配列を検出した.本分離株の抗真菌剤の感受性はAMPH; 0.5 μg/ml,ITZ; 0.5 μg/ml,MCZ; 0.5 μg/mlであったが,5-FC,FLCZ,MCFGには耐性を示した.ITZを20 mg/dayで9日間経口投与し,いったん症状の改善を認めたが,第9病日に全身状態の悪化および家族の希望により,安楽死となった.今回の症例は猫エイズによる免疫不全からの日和見感染症と推測された.本菌種は自然界に広く分布するので,今後ヒトにおいても免疫不全患者での感染に注意を要する菌種の一つである.

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© 2006 日本医真菌学会
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