日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: SY-4-2
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外科・救急領域真菌感染におけるnon-albicansの関与とその治療
Candida glabrataによる全身性炎症反応
*松田 直之丸藤 哲
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抄録

【はじめに】救急・集中治療領域の菌血症の起炎菌として,Candida 属の検出は多い。Candida glabrata(CG)の血流感染が主要臓器に与える影響を,動物研究で評価した。【方法と結果】8-12週齡の雄性Bulb-CマウスにCG 108/kgを生理的食塩水1 mLに撹拌し尾静脈内投与すると,2日死亡率は抗真菌薬を使用しない状況で約40%だった。CG投与後24時間で,全身潅流の後に肺,右心房,大動脈,腎臓を摘出し,転写因子nuclear factor-κB(NF-κB)活性をウエスタンブロッド法で解析した結果,対照群に比較して,肺で約7.2倍に,右心房で約4.5倍に,大動脈で約2.1倍に,腎臓で約4.3倍に,NF-κB活性が高められていた。肺に経気道的にToll-like受容体(TLR)2,TLR4,およびDectin-1の siRNAを遺伝子導入し,各受容体発現を肺選択的にノックアウトさせた系では,各々CGによる肺のNF-κB活性は対照群の約5倍に留まった。これに対して,tumor necrosis factor(TNF)受容体1をsiRNAで肺選択的にノックアウトさせると,CGによる肺のNF-κB活性は対照群の約3倍に減じた。CG投与後24時間の血漿TNF-α濃度は,700 pg/mLレベルに高められていた。【結語】CGは血流感染となることで,主要臓器の炎症強度を高めた。臓器に存在するTLRやDectin-1などはCGの炎症効果発現に必要である。しかし,臓器炎症の進展には,血中で高められたTNF-αなどの炎症性サイトカインが臓器の炎症性受容体のリガンドとして作用することが強く関与すると評価された。【文献】1. Matsuda N, et al. Nuclear Factor-κB decoy oligonucleotides prevent acute lung injury in mice with cecal ligation and puncture-induced sepsis. Mol Pharmacol 2005;67:1018-25.2. Matsuda N, et al. Silencing of caspase-8 and caspase-3 by RNA interference prevents vascular endothelial cell injury in mice with endotoxic shock. Cardiovasc Res 2007;76:132-40.

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© 2008 日本医真菌学会
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