抄録
Talaromyces 属およびその関連菌である Hamigera 属,Byssochlamys 属は,子のう胞子が耐熱性を示すことから食品,飲料などの製造過程における事故原因菌として重要である.Talaromyces 属は, Penicillium 以外にも Geosmithia,Paecilomyces をアナモルフにとする種があり,分子系統的にも多系統と指摘され,分類学的に混乱している.今回, 本属および関連菌種の 28S rDNA D1/D2 領域,β-チューブリン遺伝子の塩基配列を決定し,NJ 法により系統解析を実施した.その結果,2 遺伝子の解析からえられた系統樹はほぼ一致し,Talaromyces 属は 5 群に再分類され,Byssochlamys 属,Hamigera 属とは系統的に明確に区別された. この解析結果を用いて,飲料などの製造工程で問題となる耐熱性カビの検出方法の検討を行った.菌が検出された場合の識別・同定法については,DNA の抽出,増幅条件等の最適化により,新たに開発した耐熱性カビの識別用プライマーを用いて酵母や一般のカビと問題となる耐熱性カビの識別ができ,Talaromyces 属、Byssochlamys 属、Hamigera 属および Neosartorya 属の 4 属を属レベルでの同定が 8 時間以内で可能となった.