抄録
Aspergillus section fumigati に属する菌種のうち、A. fumigatus はアスペルギルス症原因菌として最も重要な菌であるが、これまで臨床からの分離株には典型的な A. fumigatus 以外の株も混在していた。近年、分子系統解析によって非典型的な株の多くは A. fumigatus とは別種とされている。現在、非 A. fumigatus およびアナモルフのみを形成するヘテロタリックな Neosartorya は 16 種報告されており、このうち A. arvii、A. fumigatiaffinis、A. fumisynnematus、A. lentulus、A. neoellipticus、A. viridinutans、N. fenneliae、N. udagawae がヒトや動物に対しての病原性を示している。今回は日本、中国、ブラジルなどの土壌から非 A. fumigatus を分離し、系統解析の結果と形態学的知見とを比較研究した。その過程で未報告種を認めたので併せて報告する。方法:土壌および臨床分離株と既知種をβ-チュブリン、ハイドロフォビン、カルモジュリン遺伝子などを用いて系統解析を行い、形態学的知見と比較検討した。結果:系統解析の結果、7 クラスターに分類された。概ね系統解析と形態学的知見は一致したが、系統は一致するが形態が異なる例や系統は異なるが形態が一致する例も認めた。これまで A. fumigatus とされていた臨床株の分類的位置を明らかにした。