抄録
Fonsecaea pedrosoi は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、rRNA遺伝子のITS領域を用いた制限酵素切断片長多型(RFLP)分析の結果、それぞれ7タイプと6タイプに分けられている。 我々は、メラニン合成酵素遺伝子(PKS 1)の一部を用いてさらに詳しいタイプ分けを試みてきた。 まず、GenBank に登録されていたExophiala dermatitidis とExophiala lecanii-corni のPKS1領域を用いて、F. pedrosoi のPKS 1 領域の増幅が期待されるプライマーを設計し、得られたPCR産物を用いて、制限酵素によるタイプ分けを行った。臨床分離株30株のDde I、Msp IによるRFLP分析では、これまでの結果と同様のタイプ分けが可能であった(第50回日本医真菌学会)。 今回、F.pedrosoi の 各mtDNAタイプ各1株について同領域の塩基配列を決定し、type1: KMU3713 コスタリカ分離 1809bp、type2: KMU3811 タイ分離1809bp、type3: KMU 3803 ベネズエラ分離 1804bp、type4: KMU3712 コスタリカ分離 1809bp、type5: KMU3807 コロンビア分離 1799bp、type6: KMU3808 コロンビア分離 1799bpであった。 E.lecanii-corni と比較し、同領域は1箇所のイントロンを含むことが分かった(type1:227-289bp)。各タイプのエクソン部分での遺伝子置換率は、最小でtype1と4の1.6%、最大でtype1と5の16.5%であった。さらにUPGMA法で系統樹を作製しITS、 cytochrome b領域の系統樹と比較したが矛盾はなかった。