主催: 日本医真菌学会
共にTrichophyton mentagrophytes complexの有性世代であるA. simiiとA. vanbreuseghemiiは、1973年のTakashioの報告により別種であるとされている。しかし、topoisomerase遺伝子の塩基配列を基に推定した系統樹ではA. simiiとA. vanbreuseghemiiの系統が分けられない事から、我々はこれら2種が同種である可能性を考えた。交配能の落ちたテスター株をマウスに感染させて逆培養する事で交配能の回復を図り、種々の組み合わせで交配実験を行ったところ、2004年にインドで人から分離されたA. simii株KMU4810(+)とA. vanbreuseghemiiのテスター株RV27961(-)との交配に成功した事は昨年の本会で報告した。今回はさらに、昨年得られたF1世代のHybridのうちの1株(KMUAsv11株; rRNAとactin遺伝子はA. simii型、topoisomerase遺伝子はA. vanbreuseghemii型)をA. vanbreuseghemii(RV27961)と戻し交配したところ子嚢胞子の産生が確認された。稔性のあるF1が産生される事から、A. simiiとA. vanbreuseghemiiとの交配は異種間交配ではなく通常の種内交配であると考えられ、2種の同種性が強く示唆された。