音楽知覚認知研究
Online ISSN : 2434-737X
Print ISSN : 1342-856X
クラシック音楽の繰り返し聴取が主観的評価と心理的複雑性に及ぼす影響
中学生についての検討
森橋 和也菅 千索
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2009 年 15 巻 1 号 p. 1-14

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抄録
本研究では,音楽の反復聴取の効果に関する実証的な調査を,中学生75名に対して音楽科の授業中に行った。使用された音楽作品3曲は,学習指導要領(文科省)に準拠した教科書掲載の鑑賞指導用クラシック音楽作品から,事前の調査により中学生にとって心理的複雑性が異なると判断されたものであった。参加者は毎週1回行われる音楽の授業時間において,授業の開始時と終了時に同じ作品の鑑賞を計7回行い,奇数回目の聴取後のみに12の7段階SD尺度に4度評定した。因子分析の結果,「好き―嫌い」で代表される評価性因子と「単純な―複雑な」で代表される複雑性因子が抽出され,その因子得点を従属変数,聴取曲目の違い(DM),参加者の音楽経験の違い(MC),反復聴取の回数(RE)を独立変数とする3要因分散分析を行った。その結果,主効果が有意であったのは,評価性因子[好き―嫌い]ではDM(Vn協奏曲<春の祭典=フィガロ)とMC(音楽経験あり<音楽経験なし),複雑性因子[単純―複雑]ではDM(フィガロ=Vn協奏曲<春の祭典)とMC(音楽経験なし<音楽経験あり)とRE(7回目=5回目=3回目<1回目)で,交互作用はすべて有意ではなかった。これらの分析結果をもとに反復聴取が主観的評価と心理的複雑性に及ぼす影響について検討した。
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© 2009 日本音楽知覚認知学会
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