抄録
和音は,音楽聴取で知覚される情動に大きな影響力を持つ。先行研究の多くは単一の和音を対象としているが,音楽では和音進行が重要な役割を持っていると考えられる。本研究においては,和音進行聴取時の脳活動と心理的な印象について,fMRI (functional Magnetic Resonance Imaging) および SD (Semantic differential) 法を用いた検証を行った。その結果,長三和音を含む和音進行の聴取によって,Brodmannʼs Area 47 の賦活が確認された。また,進行後の和音の印象は不協和度・モダリティ・緊張度・単純性の四因子があり,全因子において和音進行によって和音の印象に有意な変化が生じることが明らかになった。長三和音が特に他の種類の和音と異なる印象を引き起こす和音であることも示され,脳活動との間にも整合性が見られた。