2024 年 30 巻 1 号 p. 19-25
認知症は,全世界で約5,000万人が抱えており,2050年までにはその数が約1億5,200万人に増加すると予測されている。日本では,高齢者の間で特に認知症の有病率が高く,軽度認知障害(MCI)も一定の割合で見られる。認知症は様々な原因疾患による高次脳機能障害から成り,アルツハイマー型,血管性,レビー小体型,前頭側頭型など多岐にわたる。認知症の症状は,記憶障害,見当識障害,遂行機能障害などの中核症状と,不眠,徘徊,幻覚,妄想などの行動・心理症状に分けられる。認知症の治療には,現在,根本治療薬が存在しないため,補完的治療が重視されており,運動療法や音楽療法などの補完的治療が効果を示している。特に,健常高齢者および軽度から中等度の認知症患者に対して行われた運動と音楽を組み合わせた介入は,認知機能の改善や日常生活の活動度の維持に効果があることが示されている。また,新型コロナウイルスのパンデミックに伴い,オンラインによる認知症予防プログラムの有効性が検討され,N-バックなどの特定の認知機能に対する改善が観察された。さらに,音楽療法に関するシステマチックレビューでは,アルツハイマー型認知症の行動・心理症状への肯定的な影響が確認されており,今後さらなる研究が必要であることが指摘されている。