多文化関係学
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多文化における大学教育とキャリア開発に関する比較研究 : 日本人並びにアジア人卒業生を対象にして
鈴木 勘一郎平井 達也
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2013 年 10 巻 p. 87-101

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抄録
本研究では、西日本地区にある某×大学の日本人と留学生の卒業生を対象に、在学時での(a)大学教育、(b)やる気や満足、(c)現時点でのウェルネス(活力、レジリエンス、忍耐力など)、(d)キャリア満足など4つの観点について評価してもらい、各要素間でどのような関係と違いがあるのかを統計的に検討した。本研究の目的を純粋な仮説検証ではなく探索的な仮説構築に置いたが、日本人学生と留学生の卒業後まで追跡した調査は稀少であり、グローバル人材に関する議論の実証的な研究として貢献し得ると考える。まず留学という特異な体験や困難を経験している留学生の卒業生の方が日本人卒業生に比べて、4つの観点すべてにおいて高い水準を示すであろうという予想を立て、その仮説命題の妥当性を探った。分析の結果は、大学教育とウェルネスに関して仮説命題はほぼ支持されたが、大学時の満足とキャリア満足については支持されなかった。最終的に、留学生は日本人卒業生に比べて、大学教育をより肯定的に評価し困難に打ち克つ力や物事にあきらめずに取り組む力などが強く、結果卒業後のキャリア開発の満足度も高いという可能性が示唆された。最後に本比較研究の結果から示唆された仮説命題に関して、日本人学生や留学生に対する学習方略、キャリア開発へのヒント、また将来に向けた研究課題などを議論した。
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© 2013 多文化関係学会
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