多文化関係学
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論文
国際ボランティアの参加者は活動を通して何を学んでいるのか
実践の共同体を視点として
出口 朋美
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2016 年 13 巻 p. 19-31

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抄録
本研究の目的は、国際ボランティアの参加者が何を学んでいるかを、状況的学習理論の観点から実践の共同体 (Wenger,1998) を理論的枠組みとして明らかにすることである。日本・韓国・ロシアから計4名の参加者が子どもサマーキャンプでの協働の経験を語ったインタビューデータ(合計10.4時間)を、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(木下, 2007; 佐藤,2006)の方法を用い分析した。その結果、《子ども村のボランティアスタッフとしての活動》《第二言語コミュニケーション》、《文化に対する意味付与》、《IVPチームとしての「私たち」の形成》の4つのカテゴリーが浮かび上がった。最後に結果をまとめ、参加者の語りはボランティア活動というローカルな視点が中心となっていたこと、さらに各参加者の文化資本 (Bourdieu, 1991) や役割によって学びの質が異なっていたこと、発言の時系列変化に注目することで学びのダイナミズムが確認されたことについて考察を試みた。先行研究では文脈とは切り離されたスキルや知識の獲得が議論の中心となってきた国際ボランティアにおいて、本研究の結果は参加者の視点から、その学びが具体的な活動や役割、そして他者との相互作用の中に埋め込まれた営みであることを示唆している。
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© 2016 多文化関係学会
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