多文化関係学
Online ISSN : 2189-8650
Print ISSN : 1349-5178
ISSN-L : 1349-5178
論文
日本人ホストはムスリム留学生とどのように対人関係を築くのか
関係の形成・維持の工夫と葛藤に関する事例的研究
中野 祥子田中 共子
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 14 巻 p. 59-77

詳細
抄録

本研究では、日本人とムスリム留学生との関係形成を、日本人側の視点から実証的に探索した。具体的には、ムスリム留学生と親しい関わりを持つ、日本人6名に半構造化面接を行い、交流時の葛藤や戸惑い、関係形成・維持のための工夫を尋ねた。その結果、交流時の葛藤及び戸惑いは、4つにまとめられた「: 宗教的な実践への戸惑い」、「宗教的価値観を用いた応答への戸惑い」、「宗教的な議論への戸惑い」、「宗教的な禁忌への不安」。また、関係形成・維持のための工夫は、5つにまとめられた「: 宗教的実践への配慮」、「宗教的実践への不干渉」、「共通点への注目」、「率直な自己表現」、「積極的な働きかけ」。本研究の日本人ホストは、文化差への戸惑いを抱きつつも、「適度な距離感」を保ちながら場の共有が可能になるよう努めて、交流を楽しんでいた。良好な関係形成・維持を可能にする鍵となる、双方にとっての「適度な距離感」は、最低限でさりげない配慮、過度に干渉しない姿勢、宗教的価値観を受け入れたうえで率直な意見を述べようとする態度のバランスによって創出されるものと考えられた。

著者関連情報
© 2017 多文化関係学会
前の記事 次の記事
feedback
Top