多文化関係学
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在日ブラジル人二世の教育達成を阻むものは何か
大川 ヘナン
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2022 年 19 巻 p. 61-80

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抄録
本研究は、在日ブラジル人の若者とその家族にフォーカスし、教育達成を阻む構造的要因を明らかにすることを目的とする。1989 年に出入国管理及び認定法が改正されてから既に30 年以上経過しているが、ニューカマー外国人の中で在日ブラジル人は依然として教育達成に大きな課題を抱えている。これまでの研究においては、在日ブラジル人の移動に焦点を当てた研究が行われ、移動に伴う困難が語られてきたが、本研究では移動を繰り返す在日ブラジル人ではなく、定住を決めた家族の教育達成の困難さを明らかにしていく。本研究の調査協力者たちの若者は日本語とポルトガル語のバイリンガルであり、学力面でも進学が可能であったが、進学を達成することが叶わなかった者や進学を選ばなかった者、または進学しても大学を半ばで諦めることとなった若者である。また、かれらの親は教育意識が高く、日本にも適応している親たちであったが、若者たちの教育達成をサポートすることが叶わなかった。本稿で明らかになったのは在日ブラジル人家族の日本社会における孤立であり、それぞれの家族が教育達成に向けて単独の努力を行っている状態である。その改善には、より適切な支援のあり方と日本社会と在日ブラジル人コミュニティ双方からのアプローチが必要である ことが提示された。
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© 2022 多文化関係学会
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