抄録
正期産で出生する児の10%において生後の呼吸循環動態の適応が順調に進行せず,新生児蘇生を必要とする新生児仮死で出生する.新生児仮死の中でも重症例では低酸素性虚血性脳症が引き起こされる可能性があり,中等症以上の脳症に対する標準治療として低体温療法が広く実施されている.2018年1月から2022年12月に当院NICUに入院した重症新生児仮死症例のうち,低体温療法を施行した11例を対象とし,電子カルテを基に後方視的に解析を行った.全体の傾向として男女の偏りはなく,帝王切開や初産での出生が多数を占めていた.アプガースコアでは時間経過に伴いばらつきが強くなる傾向にあり,蘇生への反応の差を表していた.また,ほぼ全例で気管挿管されていたが,胸骨圧迫やアドレナリン投与が行われていた症例は3例と少数であった.頭部MRIの異常所見は7例で認められた.頭部MRIの異常所見の有無による2群間比較では,異常所見を認める群において臨床的けいれんが有意に高率に認められた.神経発達障害は5例認められ,いずれも頭部MRIでの異常所見が認められていた.頭部MRI所見と神経発達障害には直接的な関係があるとされており,臨床的けいれんのような脳への傷害が想定される症状の出現が,神経学的予後に影響することが示唆された.低体温療法を実施した症例の外来フォローは重要であるが,臨床的けいれんを伴う場合はより慎重に行うことが必要と言える.