抄録
末梢静脈内カテーテル留置法では,対象静脈が目視困難な場合,確実な穿刺,合併症の発生に影響を及ぼす.本研究の目的は目視困難静脈の穿刺技術向上に向け,目視の可否による血管径 ・ 深さ,動脈との位置関係を超音波診断装置で,皮膚色を色差計で計測し違いを明らかにすることである.研究デザインは実態調査型研究である.対象者は健常若年女性 20名,計測静脈は 58本,計測動脈は 18本であった.その結果,目視の可否に有意差があったのは深さのみで,血管径,動脈との位置関係,皮膚色は同等であることが明らかになった.静脈の深さの平均 (SD) は,目視可能静脈が2.7 (0.7) mm,目視困難静脈が4.6 (1.8) mmであった (p=.0001).目視の可否の分離値は 3.0mm (AUC=0.919,95%CI 0.84-0.99)で,深さ3mm以上の留置カテーテル用末梢静脈は目視困難になることが明らかとなった.したがって,目視困難な静脈は深さ3mm以上の穿刺技術が,動脈穿刺の防止は,目視の可否に関わらない穿刺技術の必要性が示唆された.