日本看護技術学会誌
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原著
心臓外科分野における術前術後の呼吸訓練が生体に及ぼす生理学的影響
後藤 大地田中 裕二藤田 水穂
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2013 年 11 巻 3 号 p. 19-27

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抄録

 本研究は,心臓外科手術前後における適切な呼吸訓練のあり方についての知見を深めるため,スーフル®による呼吸訓練に着目し,その訓練が循環動態,自律神経活動,中枢神経活動に及ぼす影響を検討したものである.年齢や既往歴,治療方針の影響を防ぐため健康な成人10名を被験者とし,安静時,呼吸訓練時 (5分間),その後の回復時について循環動態,自律神経活動 (訓練時をのぞく),脳波等を連続的にモニターした.その結果心拍数,血圧変動,大脳皮質活動は,呼吸訓練時において,安静時および回復時,もしくは一方と比して有意に上昇,活性化し,副交感神経活動は訓練終了5分後に比して20分後で有意に低下した (p<0.05).また,心拍数は訓練開始後3分で最大値に達し,回復するのに15~20分を要した.この結果より,今回の呼吸訓練は心負荷を生じること,交感神経活動の興奮および副交感神経活動の抑制を引き起こすこと,大脳皮質を賦活化し,特にα波の発現になんらかの影響を及ぼすこと,さらに術前訓練においては訓練方法を1回につき3分以内にし,15~20分以上の間隔をとったのちに訓練を再開するという方法が適切であると示唆された.

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© 2013 日本看護技術学会
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