2017 年 15 巻 3 号 p. 218-226
本研究の目的は, 熟練看護師 (以下, 熟練者) のベッドサイドでの視覚による観察時の注視に注目し, 新人看護師 (以下, 新人) との比較から, 熟練者の注視の特徴を明らかにすることとした. 11名の熟練者と10名の新人を対象に, 独自に作成した転倒 ・ 転落がおきやすいベッドサイドの静止画を用い, 観察時の眼球運動を測定し, 注視時間, 注視回数, 注視項目数等について熟練者と新人の比較を行った. 観察時間の制限をしない場合, 両群の観察時間, 注視時間, 注視回数に差はなかったが, 注視項目数に差があった. 注視回数の分布にも違いがあり, 熟練者は0.1~0.2秒の瞬時の注視の割合が最多であった. さらに, 観察開始5秒間では, 注視項目数, 注視回数に差はなく, 注視回数の分布に違いはなかったが, 0.1~0.2秒の瞬時の注視による危険の有無への注視回数は熟練者か新人かに差があった. 以上の結果から, 熟練者は観察開始からの短時間に瞬時の注視で優先的に危険有を“みる”ことが特徴であることが明らかになった.