日本看護技術学会誌
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15 巻, 3 号
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原著
  • 大黒 理惠, 齋藤 やよい
    2017 年15 巻3 号 p. 218-226
    発行日: 2017/01/20
    公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 熟練看護師 (以下, 熟練者) のベッドサイドでの視覚による観察時の注視に注目し, 新人看護師 (以下, 新人) との比較から, 熟練者の注視の特徴を明らかにすることとした. 11名の熟練者と10名の新人を対象に, 独自に作成した転倒 ・ 転落がおきやすいベッドサイドの静止画を用い, 観察時の眼球運動を測定し, 注視時間, 注視回数, 注視項目数等について熟練者と新人の比較を行った. 観察時間の制限をしない場合, 両群の観察時間, 注視時間, 注視回数に差はなかったが, 注視項目数に差があった. 注視回数の分布にも違いがあり, 熟練者は0.1~0.2秒の瞬時の注視の割合が最多であった. さらに, 観察開始5秒間では, 注視項目数, 注視回数に差はなく, 注視回数の分布に違いはなかったが, 0.1~0.2秒の瞬時の注視による危険の有無への注視回数は熟練者か新人かに差があった. 以上の結果から, 熟練者は観察開始からの短時間に瞬時の注視で優先的に危険有を“みる”ことが特徴であることが明らかになった.

  • ―循環動態および自律神経活動指標による評価―
    尾形 優, 金子 健太郎, 後藤 慶太, 河野 かおり, 山本 真千子
    2017 年15 巻3 号 p. 227-234
    発行日: 2017/01/20
    公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

     冷え症において, 冷え症群と非冷え症群とを循環動態指標および自律神経活動指標を用いて比較し, 冷え症の生理学的メカニズムを明らかにすることを目的とした. 対象は若年健常女性20名 (冷え症群12名, 非冷え症群8名) とし, 晩秋 ・ 冬季に測定を実施した. 生理学的指標として, 心拍数 ・ 血圧 ・ 末梢皮膚温 ・ 末梢血流量 ・ 鼓膜温 ・ サーモグラフィ ・ 四肢血圧脈波を用いた. 自律神経活動指標は, 心拍変動を用いて周波数解析を行い, 副交感神経活動指標と交感神経活動指標を求めた. データの分析は両群間を指標ごとに比較 ・ 検討し, 加えて各群における鼓膜温と各末梢皮膚温との差を両群間で比較した. その結果, 冷え症群は非冷え症群にくらべて副交感神経活動指標が低値で, 交感神経活動指標が高値であった. 末梢循環においては, 冷え症群の血流量低下と皮膚温低下も明らかであった. よって, 冷え症者は安静時の副交感神経活動が小さく, 交感神経活動の緊張により安静時すでに末梢の循環機能低下が起きていることを明らかにした.

  • ―60歳以上の健常な高齢者による検討―
    古島 智恵, 井上 範江, 長家 智子, 村田 尚恵, 坂 美奈子
    2017 年15 巻3 号 p. 235-244
    発行日: 2017/01/20
    公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

     本研究は, 硝子体手術後のうつむき姿勢を想定した体位の保持に伴う苦痛に対する温罨法およびマッサージの効果を検証することを目的とした.
     対象者は健常高齢者とし, 温罨法群 (12名 ; 67.3±3.3歳), マッサージ群 (12名 ; 66.5±4.0歳) のそれぞれで検討した. 温罨法群では, うつむき姿勢のみ, うつむき姿勢に加え温罨法実施の2条件, マッサージ群では, うつむき姿勢のみ, うつむき姿勢に加えマッサージ実施の2条件を実施した. うつむき姿勢は90分間とし, 温罨法は開始45分後から肩部に42℃前後のホットパックを30分間, マッサージは開始45分後から肩~背部へかけ10分間実施した. 測定項目は気分評価, 主観的疼痛, 心拍数, 自律神経活動指標, 皮膚温等とした.
     温罨法およびマッサージは, うつむき姿勢保持による主観的疼痛を一時的に軽減する効果が示唆された. さらに, 温罨法はうつむき姿勢保持に伴う心拍数および血圧の上昇を防ぎ, マッサージは一時的に低下させる効果が示唆された. うつむき姿勢保持に伴う皮膚温の低下に対しては, 温罨法は直接作用する肩部の皮膚温を上昇させる効果が認められたが, マッサージでは効果は認められなかった.
     また, 対象者の主観的な感覚や身体的反応には個人差が大きく, 高齢者において硝子体術後にうつむき姿勢の保持が必要な場合には, 本人の疼痛の訴えに頼らず身体への負担を予測した援助が必要であることが示唆された.

  • 前田 耕助, 大黒 理惠, 大河原 知嘉子, 樺島 稔, 齋藤 やよい
    2017 年15 巻3 号 p. 245-254
    発行日: 2017/01/20
    公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

     背部への温度刺激が脳の活動に及ぼす影響を, 近赤外分光法を用い脳血流動態から明らかにすることを目的とした. 健常成人男性28名の背部の肩甲骨間に, 16℃, 33℃, 42℃の温度に設定したホットパックを420秒間当て, 左前頭前野の脳血流動態の測定と快 ・ 不快の主観評価を行った. 分析は脳血流量をZscore化し, 各時間帯の脳血流量ならびに脳血流動態の変化をもとめた. 結果, 16℃の温度刺激による脳血流量の変化量は, 刺激開始から60秒で33℃と42℃より, 90秒で33℃より減少した (P<0.05). 温度刺激に伴う快 ・ 不快による脳血流動態への影響は, 42℃のみ快の脳血流動態の増加または減少の変化が不快より小さかった (P<0.05). これらより16℃の背部への温度刺激は一時的に33℃, 42℃とくらべ脳血流量に減少の変化を促すこと, 背部への温度刺激に伴う快 ・ 不快による脳血流動態の増加または減少の変化は, 刺激温度によって異なることが明らかになった.

研究報告
  • 上野 洋子, 前田 ひとみ
    2017 年15 巻3 号 p. 255-264
    発行日: 2017/01/20
    公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 先行研究から, 新生児への医療関連感染制御対策における手袋使用の効果を明らかにすることである.
     医学中央雑誌 (Ver.5), PubMed, CINAHL Plus with Full Textを使用し, 1970年以降の文献を「手袋」, 「新生児」, 「院内感染」もしくは「医療関連感染」, 「gloves」, 「neonates」, 「nosocomial infections」 or 「healthcare-associated infections」をキーワードとして抽出した国内外の58文献を分析対象とした.
     1970年代から1990年代の研究文献はアウトブレイク報告が中心で, 2000年代に入り手袋使用効果を検証した研究が増加していた. 手袋使用量を記載していた文献を基にMRSA保菌率と手袋使用量の関連性を調べた結果, 手袋使用量とMRSA保菌率のPearsonの相関係数はr=-0.873と強い負の相関があった. さらに, 手袋使用の有無によるMRSA保菌のリスク比は2.24 (95%Cl : 1.79-2.79) であった. これらの結果から, MRSAは手袋使用によって感染予防可能な病原菌であるといえる. しかし, 手袋の使用効果を十分に発揮できていない現状があり, 感染伝播の抑制が困難な状況下にあることが明らかとなった.

  • 佐々木 杏子, 大久保 暢子, 鈴木 和代
    2017 年15 巻3 号 p. 265-275
    発行日: 2017/01/20
    公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 急性期脳血管疾患患者の早期離床を支援する「背面開放座位ケアプログラム」を導入した2病院に対して, プログラムの導入過程を調査し, 明らかになった普及の促進 ・ 阻害要因から, プログラム普及に向けた対策を検討することである. 促進要因としては, 「背面開放座位ケアプログラムの導入を指導した開発者がチェンジ ・ エージェントとして効果的に機能したこと」, 「中心となって実践したチェンジ ・ チャンピオンの活動」, 「看護管理者, 医師をはじめとする多職種 ・ 家族の協力」, 「病棟の文化」, 「高い相対的優位性」であった. 阻害要因としては, 「看護師の異動や退職」, 「採用拒否者の存在」, 「教材の不足」, 「複雑性の高さ」, 「観察可能性の低さ」であった. オピニオンリーダー育成に向けた教育プログラム作成の必要性や, 異動に左右されず縦断的に活動できる看護師を活用することの必要性が示唆された.

短報
  • -左右結び法と三角法の比較-
    秦 さと子, 末崎 夏帆
    2017 年15 巻3 号 p. 276-280
    発行日: 2017/01/20
    公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

     防水性マットレスカバー (以下, 防水性カバー) に対する左右結び法は三角法に比べてずれの小さい敷シーツ作成法であるか検討するために, 防水性カバーと通気性カバー上にそれぞれ作成した三角法と左右結び法について, 頭側, 足側, 左側, 右側の4ヶ所のずれ幅を測定し比較した.
     防水性カバーを用いた場合は, 頭側, 足側において左右結び法が三角法より有意にずれ幅が小さく, 左右側のずれ幅に関しては有意差が認められなかった. 通気性カバーを用いた場合は, 頭側, 右側において左右結び法が三角法より有意にずれ幅が小さく, 足側, 左側のずれ幅に関しては有意差が認められなかった.
     以上より, 防水性カバーにおいて左右結び法は三角法よりずれにくいシーツ作成法であることが示唆された.

  • 大﨑 真, 武田 利明
    2017 年15 巻3 号 p. 281-286
    発行日: 2017/01/20
    公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

     薬剤の血管内投与に伴う静脈炎発症後の看護ケアとして, 20℃での冷罨法の有効性が明らかとなっている. しかし, 炎症抑制効果が得られる効果的な貼用時間に関するデータは得られていない. そこで本研究では, このような静脈炎に対し効果的な冷罨法の貼用時間を明らかにすることを目的とし, ラットを用いた基礎研究を行った. 薬剤を投与してラットの尾に実験的な静脈炎を作製後, 氷嚢の貼用時間を10分, または30分で冷罨法を施行し, 罨法を施行しない対照群と肉眼的所見, 腫脹, 組織学的所見について症状を比較検討した. その結果, 30分間の貼用によって, 10分間より明らかに強い腫脹抑制効果が認められた. したがって, 今回の実験条件においては, 静脈炎に対する冷罨法の効果的な貼用時間は30分間であると考えられた.

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